富士山の閉山期登山を巡り、静岡県が登山届の義務化を検討しています。登山届を出さずに遭難した場合のペナルティーも検討される一方、周辺自治体からは救助費用の有料化を求める声も出ています。自己責任論からすると当然の話と言えそうですが、なぜ簡単に有料化が実現できないのでしょうか。制度の限界と法的課題を解説します。

救助費用の有料化が簡単ではない理由の一つが、公的な救急・救助は原則として公費で担うという法制度です。消防署の救急車による搬送が無料であるように、消防や警察による遭難救助は公的サービスの一環として行われています。

消防組織法も市町村に救急・救助の法的責任を負わせ、費用は市町村が負担すると定めています。しかも、遭難救助には複数の公的機関が関わり、それぞれ根拠となる法律や制度が異なります。ヘリによる救助を有償で事業として行えば、運航体制や安全管理など、航空法の厳しい要件もクリアしなければなりません。

民間ヘリであれば遭難者に費用負担を求めることができるものの、公的機関による救助となると、明確な法的根拠や制度設計が不可欠です。政府も、他の救助との公平性や有料・無料の線引きの難しさ、救助要請をためらわせるおそれなどを課題として挙げています。

ただ、無謀な登山者による遭難が相次ぐ中、自治体の負担も無視できません。山梨県では閉山期の軽装登山による遭難などを念頭に、県の防災ヘリ出動分に限って有料化する方向で検討中です。公的救助の一律有料化が難しい中、特定の枠組みに絞った実効性ある制度設計ができるかが今後の焦点です。