蒼井優さん主演のTBSドラマ「Tシャツが乾くまで」の最終話が11日に放送されました。これまでの伏線を回収しつつ、独特の余韻を棚引かせるラストとなりました。視聴率は第1話の6.9%から右肩上がりを続け、第9話では番組最高の8.8%をマーク。TVerでも4日時点で累計再生回数3400万回となるなど記録づくめの道のりを歩んでいます。壮大な設定や派手な展開があるわけではない。その作品がなぜ多くの人の心をつかんだのか。二つの理由が垣間見えます。

物語自体は決して刺激的ではない。バス事故を除けば、描かれるのは日常の範疇です。それを「何を見せられているんだ」にしなかったのは蒼井さん、松山ケンイチさん、中島歩さんをはじめとする役者の力。

一言で空気を変える、いわば居合の達人が揃った布陣です。一寸先が読めないからこそ、視聴者はじっと画面を見るしかない。予測不能の緊張感が、派手な仕掛けなしに人の心をつかみました。

このドラマはサスペンスなのか、刑事アクションなのか、コメディーなのか、見る前に視聴者はある程度“味”を見越して“店”に入ります。しかし、今作は店に入ってもそこが寿司屋さんなのかイタリアンなのか分からない。

コースの一品一品を味わいつつ探るものの、それでも何屋さんか分からない。ただ、丁寧な仕事ぶりに最後まで客は席を立たない。全てを見終えた人の中にのみ、それぞれが思う看板が出る。7月に行われたプレミアム試写会で松山さんが語った「いろんなジャンルを行ったり来たりするような作品」という言葉に奥行きを感じます。

豪華食材を用いずとも腕の良いシェフがこだわりぬけば店は流行る。テレビの可能性を明確に示す一本でした。