外食業界で一つの店舗に二つのブランドを掲げる「ダブル看板」が広がっている。

代表例が「松屋」と「松のや」の複合店だ。松のやは松屋との併設を武器に店舗数を急拡大し、店舗数では「かつや」を上回った。ラーメン「壱角家」を展開するガーデンも、油そばとの「二刀流」を進め、7月の既存店売上は17か月ぶりに前年を上回った。「ゆで太郎」でも「もつ次郎」の併設が進む。

なぜ外食企業は、二つの看板を一つの店舗に掲げるようになったのか。背景には、既存店舗と既存顧客を生かして売上を伸ばそうとする外食企業の成長戦略がある。

こうした複合店が目立つようになった一つの転機がコロナ禍だ。すかいらーくは2020年から「ガスト」で「から好し」のから揚げを扱う店舗を急速に増やし、2021年1月には600店を突破した。外食需要が大きく変化する中、新たな店舗を出すのではなく、既存店に新しい商品や利用動機を加える動きが広がった。

現在は、その考え方がさらに進んでいる。「松屋+松のや」は牛めしととんかつ、「壱角家+油そば総本店」は家系ラーメンと油そば、「ゆで太郎+もつ次郎」はそばともつ煮・定食。同じ商圏、近い客層に別の選択肢を増やし、一つの店舗でより多くの需要を取り込む。

強みは、すでにある立地、厨房、人員、客席、知名度を活用できることだ。ガーデンも「二刀流外食」について、既存店舗の資産を生かし、新規出店より初期投資を抑えられるとしている。利用時間帯や来店目的を広げられる点も大きい。

人件費や建築費、家賃など店舗運営コストが上昇する中、「一店舗一ブランド」から「一店舗二ブランド」へ。松のやは出店加速、ガーデンは既存店回復、もつ次郎は夜需要開拓につなげる。ダブル看板は、既存店の生産性を高める成長戦略として存在感を増している。