寝転がったロボットが、反動をつけて跳ね起きる。中国のヒト型ロボット新興企業「宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)」が2025年3月に公開した「G1」の映像に、世界は驚いた。だが、起き上がったのはロボットだけではない。中国の製造業が、ヒューマノイドという次の市場で早くも立ち上がったのである。見るべきは跳躍の高さでも、走る速さでもない。本当の恐ろしさは、未完成品を即座に市場へ放ち、膨大な失敗から爆速で改良を重ねる開発姿勢だ。完成度を重んじる従来の常識を覆そうとしている。

 宇樹科技は2025年、二足歩行型ヒューマノイドを5500台以上販売した。その多くが必ずしも、人間に代わる完成した労働力というわけではない。大学や企業がそれを動かし、転ばせ、そして改良を加える「5500台分の実験場」といえる。

 日本企業が不具合を工場内で解消してから製品を出すのに対し、中国企業はまず市場に出して利用者に試してもらう。そこで見つかった問題点を次の製品に素早く反映させ、開発を加速している。

 だが、これは単なる技術革新ではない。中国企業は中国共産党の指導から自由ではない。ロボット技術や量産能力は、必要に応じて国家戦略や安全保障に接続される。一企業の成長がそのまま国の力に回収される構造がある。

 宇樹科技の創業者、王興興(Wang Xingxing)董事長兼総経理は1990年生まれだ。若い天才が一人現れたという驚きではない。中国には世界を追い越そうとする優秀な若者が大勢おり、資金、大学、部品供給網、地方政府、そして中国共産党がその野心を後押ししている。

 中国ロボット産業で警戒すべきなのは、製品をいち早く市場に出して改良を重ねる企業のスピードと、世界一を目指す若い技術者を国が後押ししている点だ。