中国のラテンアメリカ進出を考える際、巨大港湾やダムだけに目を奪われてはならない。中国は巨大経済圏構想「一帯一路」の下で港湾や道路、鉄道、発電所など大型インフラへの投資を各地で進める一方、近年は電気バス、配電網、監視カメラ、緊急通報システムなど、市民生活に近い分野でも存在感を強めているからだ。ただ、中国製品の普及が直ちに政治的な「支配」を意味するわけではない。問題は、機器の納入から保守、ソフトウエア更新、融資、人材育成までを特定の国や企業に頼ることで、将来の選択肢が狭まる可能性にある。
中国の対ラテンアメリカ進出は「一帯一路」を象徴する巨大港湾などの大型事業と、都市交通や治安といった生活密着型インフラが並行して進んでいる。機器・融資・保守を一括して提供する中国側の提案は、資金や技術を必要とする国にとって魅力的だ。受け入れる側も自国の利益を優先し、各国や企業を競わせながら導入を進めている。
生活インフラは一度定着すると、他社の製品やシステムへの切り替えが難しい。とりわけ監視システムなどでは、誰がデータを保有し、どこで保存し、誰がアクセスできるのかといった管理・運用の透明性を慎重に検証する必要がある。
中国政府がすべてを計画して進めているとは限らない。ただ、中国とラテンアメリカ諸国の間で経済や治安面の協力が積み重なれば、それが将来、中国の政治的影響力の拡大につながる可能性はある。
インフラ市場の喪失やデータ主権の確保という観点から、この問題は米国だけでなく日本にとっても無関係ではない。一方的な「中国支配論」に陥るのではなく、誰がデータを管理しているのか、中国企業への依存度はどの程度なのか、契約終了後も別の企業やシステムを選べるのかといった具体的な運用実態を見極めることが重要だろう。