イオンモール熊本の爆発をめぐり、地震後、2階の店舗から1階の金庫に売上金を移すため、屋外避難していた従業員2人を館内に戻らせたテナント運営会社の指示が波紋を呼んでいます。これにより2人が命を落とす結果となっているからです。災害時において、従業員を危険な場所に戻す指示を出した会社や幹部にはどのような法的責任が問われるでしょうか。刑事・民事の両面から解説します。
運営会社は重い法的責任を負うと考えられます。まず刑事責任ですが、幹部らは避難後の立ち入りを禁じる防災マニュアルに反する指示をしており、業務上過失致死罪に問われる可能性があります。
建物が吹き飛ぶほどの爆発自体は予見困難だったとしても、大地震直後は余震や崩落、火災、ガス漏れなど二次災害の危険性が極めて高い状況でした。売上金保全のため館内に戻るよう求めた行為は、注意義務を著しく怠った過失と評価され得ます。「もし入れるなら」といった打診でも、業務上の上下関係からは実質的な強制力をもつ指示であり、過失を否定する理由にはなりません。
民事についても、会社側は不法行為責任に加え、安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任も負うことになるでしょう。企業には従業員の安全確保を最優先する法的な義務があるからです。
ただ、他のテナントでも従業員が避難後に館内に戻って命を落としたり、爆発直前に脱出して九死に一生を得たりしています。地震後のイオン店舗内外の状況や、どの程度まで危険を予見できたのか、指示はどのような経緯で出され、従業員に拒否する余地があったのかといった事情を調べるためにも、警察による徹底した捜査が求められます。