『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』が公開3日間で興行収入22.4億円を突破、動員150万人超という好スタートを切りました。上映回数も都内主要館では“時刻表”と呼ばれるほど多く、劇場側の期待の大きさがうかがえます。その見込みどおり、満席の回も目立つとの報告もあります。

実際に鑑賞したところ、原作の重いテーマを誠実に映像化した作品で、観客の反応も熱狂というより静かな余韻が残るタイプでした。SNS上では「親子ともに、ビターなラストに戸惑った」との声も見られます。では、この作品はここからどこまで伸びるのでしょうか。

本作は、原作でも特に人気の高い長編エピソード「セイレーン編」を映画化した作品です。原作者のナガノ氏が脚本を手がけていることから、原作の空気感を大切にした仕上がりだと感じました。

主要キャラクターたちは可愛らしい一方で、ご馳走にはしゃぐ場面にさえ、どこか不穏な空気が漂います。ファミリー映画でありながら、お子様向けの手加減は一切ありません。それどころか、「怖さ」の演出にはさらに磨きがかかっています。

流血などの直接的な描写はないものの、歌声や打撲音といった音響演出は、映画ならではの特性を存分に生かしています。さらに声のニュアンスが加わったことで、セリフに込められた意味もより伝わりやすくなっています。

こうした演出は、原作が持つ深いテーマを、原作未読の人にも伝えるはずです。ただ、分かりやすいスペクタクルにはあまり重きを置いておらず、物語の重さも相まって、リピーターをどこまで呼び込めるかは未知数です。1回の鑑賞で高い満足感を得られる一方、何度も劇場へ足を運びたいと思わせるタイプではないかもしれません。

もっとも、夏休みはこれからが本番です。口コミが新たな客層を呼び込む可能性もあり、今後の興行の推移に注目したいところです。