約10年前、南シナ海仲裁裁定(2026年7月12日)での法的敗北以降も、中国は領有権主張を取り下げず、対立を「終わらせない」姿勢を維持している。この頑なさは、単なる国際法軽視ではなく、未解決状態そのものを活用する巧妙な長期戦略といえる。中国は政府声明による主張の反復、現場での既成事実化、言葉や認識の攻防を組み合わせ、将来の情勢変化に備えて交渉材料と政治的資産を蓄積している。対する日本などの関係国には、主張の維持と現場の警戒を重ね、中国の解釈が定着するのを阻む「持久戦」の覚悟が必要だ。
中国は仲裁裁定で、南シナ海における歴史的権利の法的根拠を否定され、法的敗北を喫したのに、その裁定を「無効」として拒み続けている。背景に、自国の主張を消さず現場で存在を常態化させ、将来の情勢変化に備えて交渉材料を残す、という長期戦略が存在するのだろう。
中国の手法は単なる主張の維持にとどまらず、▽政府声明や地図の公表などで争点を維持する▽人工島造成や海警船の活動により既成事実化を進める▽他国や企業に圧力をかけ、中国の立場に配慮した言葉・制度を採用させて認識の変更を図る――など、多様化している。南シナ海に限らず、台湾問題や尖閣諸島を巡る対立にも共通している。
日本を含む関係国は中国に短期間で主張を撤回させることだけを目的とすべきではない。国際法上の立場を継続的に確認し、海上警備能力の向上や事実の発信を重ね、沈黙・疲労による既成事実化を防ぐことが重要だろう。2016年の仲裁裁定も中国の即座の譲歩には繋がらなかったが、法的な基準を確立した点に意味がある。
主権や海洋権益を巡る対立は双方の立場と実績を維持する持久戦だ。中国にとって課題を「終わらせないこと」は、優位な情勢変化を待ち、勝機を探るための戦略といえる。