物価高が続く中、外食市場で興味深い動きが広がっている。
松屋フーズは「松屋PREMIUM」を出店し、くら寿司は上位業態「無添蔵」を拡大。すたみな太郎やプロントでもプレミアム業態が登場している。
一方、高級鮨の「銀座おのでら」は回転寿司や立ち食いへと領域を広げる。大衆店は上へ、高級店は下へ。これまでの価格帯による棲み分けが崩れ、異なる層の需要を取り込もうとする動きが強まっている。
背景にあるのは、消費が上下に分かれる「K字型経済」だ。外食市場ではいま、単純な「高い・安い」という価格の境界が崩れ始めている。

特徴的なのは、大衆チェーンが低価格路線を捨てて高級化しているわけではないことだ。
通常の松屋を残しながら「松屋PREMIUM」を展開し、くら寿司も値ごろ感のある通常店とは別に、客単価の高い「無添蔵」を持つ。すたみな太郎も「PREMIUM BUFFET」を展開するなど、既存の大衆性を維持しながら、その上に新たな価格帯を加えている。

一方、逆方向から市場へ入ってくる企業もある。「鮨 銀座おのでら」は高級鮨で築いたブランドや仕入れ力を生かし、「廻転鮨 銀座おのでら」や立ち食い業態を展開。高級店の品質を、より効率的でカジュアルな仕組みで提供している。つまり、大衆店は上へ、高級店は下へと動き、従来の業態ごとの価格イメージが崩れ始めている。

これはK字型経済に対応した外食企業の戦略ともいえる。日常では節約する一方、価値を感じる外食にはお金を使う。消費者の支出が二方向に分かれる中、企業も一つの価格帯だけでは需要を取り切れなくなっている。

厳しくなるのは「普通の価格で、普通の商品やサービスを提供する店」だ。安さなのか、専門性なのか、体験なのか。K字型経済で問われているのは「なぜ、その店に行くのか」という理由なのである。