ナマコは昔から日本などアジア一帯で食されてきたが、近年では全世界で生産・取引が増えている。OEC(マサチューセッツ工科大学が創設したオープンデータプラットフォーム)によると、世界のナマコ市場の規模は2018年段階で8120億ドルだったが、2023年には1億8600万ドルに拡大した。

輸入の約80%を占めているのは中国で、高級食材や漢方薬の原料になっている。

しかしナマコ市場の急拡大は、海の水質悪化への懸念も招いている。ナマコは海中で有機物やバクテリアごと砂や泥を食べるため「海の掃除屋」とも呼ばれるからだ。

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カナダの海洋学者アニー・メルシェ教授らは昨年の論文で、中国を中心にナマコ需要が急増する一方、各地の養殖による供給量は十分でないと明らかにした。この品薄感は乱獲・密輸を深刻化させている。

日本でも暴力団の関与が取りざたされているが、米ブルッキングス研究所は2022年の報告書で、中南米の麻薬カルテルがナマコの他エビ、フカヒレ、アワビ、カキなどの中国向け密輸に進出していると指摘した。

この報告書によると、中国政府は基本的に責任を認めておらず、密輸はメキシコなど輸出国の政府が解決すべきと主張している。

違法取引の拡大は種の存続への危惧も招いている。国連のFAO(食糧農業機関)によると、タンザニアなど東アフリカ沿岸ではイシナマコなどが乱獲され、ほとんど採れなくなった。

フランス国立自然史博物館のシャンタル・コナンド名誉准教授は、暖かい水域の浅瀬に生息する種類が急激に数を減らしたため、市場価値がより低いといわれる深海のナマコまで乱獲されていると指摘する。そのうえで「海の掃除屋」ナマコの減少が生態系に及ぼす影響が危険な水準にあると警告する。

ナマコ乱獲と中国の関係は、大国の食生活が世界に及ぼす大きな影響の一つの典型例といえる。