2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震を受け、消費者庁は、農林水産省・厚生労働省と連名で、災害救助法が適用された熊本県内21市町村について、賞味期限などの食品表示基準を弾力的に運用すると通知した。義務表示事項のすべてが表示されていなくても、当分の間は取り締まらないという内容だ。ただし、アレルギー表示と消費期限は例外とされた。健康被害を防止するためである。同様の措置は、コロナ禍の2020年に英国のWRAPや米国FDAも打ち出している。非常時に食料を無駄なく届けるための「表示の柔軟性」を考えたい。

今回の通知の狙いは被災地への円滑な食料供給だ。同様の措置は2024年1月の能登半島地震でも実施されており、発災2日後の1月3日開始、同年9月30日に終了した。今回は「当分の間」とされ、終了時期は示されていない。

アレルギー表示と消費期限が例外とされたのは命に直結するためだ。消費期限は品質が急速に劣化しやすい食品に表示される「安全に食べられる期限」、賞味期限は「おいしさのめやす」。この違いを知ることが重要だ。避難所などでは開封後の食品は食べ残しを保管せず速やかな消費を指導する旨、通知に記載がある。

同様の例は海外にもある。コロナ禍の2020年、英国のWRAP(ラップ)は、賞味期限を再分配の障壁にすべきでないとして、賞味期限が過ぎても食べられるおおよその期間を食品ごとに示した。米国FDAもサプライチェーンの混乱を受け、軽微な原材料変更であれば表示を変えなくてよいとする一時的な柔軟措置をとった。

食べ物への姿勢が問われるのは非常時だけではない。食料自給率が38%しかない日本で、賞味期限が食べられるものを捨てる理由になっていないか。被災地に食料が滞りなく届くことを願うとともに、平時の賞味期限の理解についても確認したい。